第22話

「初めまして、星來と同級生の響木一弥ひびきいちやです。」


「……どうも、朋政朱朗です。」


「朋政くんは、星來と小さい頃から仲いいの?」


「響木くんは、星來と中学から仲いいの?」


「質問を質問で返されたよね、うん。僕は中学から仲良くなったよ。親密って周りから言われるくらいには。」

 

「へえ。つまり星來のコネクションが欲しくて親密になったって?そーゆーこと?」



座ったまま、スマホしか見ない朱朗に、一弥が無表情のまま声を落とす。



「ねえ、言っていいことと悪いことがあるんだけど。朋政くんは場慣れしているはずなのに、空気読めない系?」


「はあ?」


「僕は星來に救われてきたけど、星來の芸歴に頼ろうなんて思ったことは一度もないよ?」


「なに熱くなってるの?その星來の芸歴は誰が作ってきたと思ってるの。星來のひい爺さんじゃん。別にコネを作るのなんて悪いことじゃ」


「星來を傷つけるなら、僕は君みたいな有名人でも殴れるんだけど。」



朱朗が貶したのは一弥のはずなのに。普段から星來本人もひい爺さんのお陰で女優になれたと言っているから、朱朗も無意識に発言していた。



しかし一弥は星來をも貶されたと思った瞬間、無表情だった顔をすぐに引きつらせた。



朱朗がそれにむかついて、手をテーブルに叩きつけて立ち上がるも。そこで亜泉と星來が慌てて止めに入る。

 


「朱朗!待って!」

「一弥!私は大丈夫だから!」



一弥を止めに入った星來に、嫌な感情が芽生え始める朱朗。



当たり前のように一弥の前に入り、胸に手をあて一弥の抑えきれない感情を落ち着かせようとしている。



まだ恋というものが分からない朱朗は、自分がストローで間接キスをした時の戸惑いある星來が星來らしいと思っていた。



だから今の一弥に対する戸惑いのない星來に、違和感を感じた。



中学2年生という、男女の意識がはっきりと区別される時期。一弥の身体に簡単に触れる星來に、言い知れぬ感情が湧き上がる。

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