第20話
そんな淡い想いを馳せていたはずの二人だったが。
5日後の本番、会場入りした二人。出演者の多さから、出番までは同じ控室で過ごしていた。
しかし一人の来訪者が、有意義に朱朗の隣に座り、ペットボトルの水を飲んでいた。
「朱朗、初めてのファッションショーで緊張してる?」
「してないけど?」
「ファッションショーも演技と一緒だと思えば大丈夫なんじゃないかな。」
「俺のがデビュー先なのになんで上から、あず兄?」
朱朗の二つ上の兄、
亜泉は小さい頃から歌やダンスに長けてはいたが、一向にメディアへの露出が定まらなかった。
しかし今、16歳になって、あるやり手女マネージャーの目に留まり、別の大手プロダクションに引き抜かれていたのだ。
『
彼らは今回のRICOコレのフィナーレで、歌とダンスを披露することになっていた。もちろん『RainLADY』の初となるデビューシングルのお披露目の場である。
「…ねえ、てかここ俺たちの控室なんだけど。なんでそんな普通にいるの。」
「弟と同じステージに立つのに、会いに来ない兄なんていないじゃん?ねえ星來ちゃん。」
星來は、青司よりもまだ話しやすい亜泉に、「ね。亜泉くん。」と笑顔で応えた。
「星來ちゃんが朱朗と仲良くしてくれてるお陰で、俺、初めてアイドルだなんて大きな仕事がもらえたんだ!ありがとう星來ちゃん!」
「違うよ、どう考えたって亜泉くんの実力じゃない。だってあの泣く子も黙るサニーファクトエンターテイメントに引き抜かれたんでしょ?どの事務所もさすがに頭上がらないんじゃないかな。」
朱朗が「いやいや」と手をふり、亜泉にあきれ顔を向ける。
「ねえ、弟の俺のお陰だとは思わないわけ?」
「どっちかっていうと星來ちゃんのひいお爺さんのお陰?」
「そんな遠いコネクションあってたまるか。」
青司といい亜泉といい、まだ子供である星來を美少女だと言っていたのを思い出した朱朗。なんとなくどちらの兄も、星來を前にすると他の人間に対するものとは違う気がして。
そんな兄を気色悪く思い、見ていられなかった朱朗。
スマホを取り出しゲームアプリを始めようとした時だった。
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