第18話

リハが終わり、私服に着替えた二人は会場のロビーに集合し、長椅子に並んで座った。



星來は朱朗に、自販機で買った紙パックのバナナオレを渡す。



少し大人の星來は、ただ知らなかったことを注意されただけで拗ねる朱朗がめんどくさいと思いつつも、放ってはおけなかった。



「……いらない。」


「…え?朱朗バナナ系大好きじゃん。」


「なにその知ったかぶり。」


「チョコバナナに始まり、バナナケーキにバナナクッキー、バナナ餅、バナナマフィン作ってきてって言ったのどこの誰よ?」


「小遣いで東京バナナ12箱買ったなんて誰も言ってない。」


「うん、その癖バナナ自体はあんまり食べないっていうね。」


「思春期ってこわいなー」


「うん、残念だけど思春期前からずっとそうだよ?このアマノジャク」



星來は自分の紙パックのお茶を飲み終わると、朱朗が受け取らなかったバナナオレにストローをさす。



そしてちゅーと吸い上げると、朱朗がチラッと見てからすぐに顔を反らした。



「……なに?やっぱり欲しくなった?」


「……『星來がほしい。』」


バナナオレ・・・・が?」


「『ひい爺さんの七光りを持つ星來がほしい。』」


「しねカス」



むかついた星來は長椅子から立ち上がると、まだ半分ほど入ったままの紙パックをゴミ箱に入れようとした。

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