第16話

それを見せられた朱朗は黙っちゃおれず、緑のラインを脱線して青司にしかめっ面を向けた。



「なにが似合わせにいくだ?!青兄なんて中学の時に出たRICOコレで、イカれたパンクロッカーみたいなポーズしてたじゃんか!」


「あ〜懐かしいなあ。あの頃はイカれてたから。まあ今もか(笑)でもイカれててもイケメン中学生だったから大した批判はこなかったよね〜。」



青司が13歳の時出演したRICOコレ。彼のランウェイでの颯爽としたウォーキングは各プロダクション、テレビ局の目を奪うほどオーラがあった。



しかしトップに立ちポーズを決める場面で青司は、中指を突き立てて、親指を下に向けてからの舌出し。そして口パクで『地獄へ落ちろ』と言った。



黒歴史をテレビカメラの前で披露してしまうから弟にネタにされてしまうのだ。



朱朗が余裕な兄に舌打ちをする。


 

星來にウォーキングを教わろうと、朱朗が星來の右横に近付こうとする。が、それを青司が立ちはだかってさえぎると、朱朗の額をひとさし指で小づいた。



「朱朗はこないだショッピングモールの七夕の短冊にすごいこと書いてたよなあ?」


「……は?なんか書いたっけ俺。」


「『星來がほしい。』」


「え?え?!俺?そんなこと書いた?!」



それを聞いた星來は朱朗に不興顔を向けるが、朱朗は尻込みすることもなく呆けた声を出す。



「…ああー、書いたかも。」

 

「アルツハイマーの無自覚くんは放っておこうねー星來ちゃん。」



星來は、七夕の短冊に『ほしい。』ってなに?というか14歳でも書くものなの?と疑問を頭に走らせた。



青司がさりげなく星來の腰に手を回すと星來の耳元でささやいた。



『無自覚くんに辛くなったらいつでも青くんが相談乗るからね』



耳が真っ赤になった星來は青司の顔が見れなくなった。



そんな青司は七夕の短冊に、『自分を中心に世界が回りますように。』と書いていたから何歳になっても欲はつきないものである。

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