第15話

「ええと、右前左前、ターン、右前、左前ターン?」


「そうそう。ただ手がバルタン星人になってるからもっと自然な感じで」 


 

青司が星來の隣に並び、足の動きを確認する。14歳になった星來は、24歳の青司のかっこよさに緊張していた。



背が高く、朱朗よりもきつめではあるが、はっきりとした中性的な顔立ち。



リネンシャツに黒のタイトジーンズ。アッシュブラウンのサイドパートヘア。星來にとってはどこもかしこもスマートに見えてしょうがない。



自分なんて所詮子供としてしか見られていないだろうが、肩に手を置かれたり、腰を支えられたりする彼の手つきに頬が嫌でも紅潮する。



7歳の朱朗に手を握られたのとは全く違う、大人の自然なタッチに星來はメロメロだった。



「〜〜〜〜っ」



それをムッとして見ていた朱朗。



いつも自分には冷めたような対応しかしない癖に、今の星來は明らかに、青兄にとろけるような顔を向けている。



「衣装はスカートだよね?」


「ええと、LACEMAGICのワンピースです。」


「けっこうポップだな。あ、そうだ。」



青司が星來の後ろから、星來の手をつかむとスカートをつまむように指示した。星來は熱くなりっぱなしで息をするのに必死だった。



「こうしてプリンセスギャルスタイルで軽くスカートをつまんで、ターンした時にスカートの広がり具合を見せるんだよ。」


「ぷ、ぷりんせすぎゃる??」


「うん、僕がつくった造語だから気にしないでプリンセス。」


「わわ私なんかがポップなブランド着て似合うのかな…」

 

「似合う似合わないじゃなくて、似合せにいくのが選ばれたモデルの仕事なんだよ?」


「(……かっこいい)」 

 


余裕のあるイケメンの言うことは言うことまでかっこいい。



「僕みたいなかっこいいことを言うイケメン、そうそういないからね?ね?!」



ただ一言余分だった。

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