第8話

柔和な顔立ちの朱朗は、右目の横にある泣きぼくろが印象的で、絶妙な垂れ目具合が幼いながらに完成された色気をつくっていた。



イケメンは中身もイケメンでなければならない。そう長兄から教えられていたため、朱朗は自分のイケメン具合を自覚していた。



「かわいい星來ちゃん、大好きな星來ちゃん。折り入って相談があるんだけど。」

 


一方の星來は、程よいツリ目で左口元のほくろが印象的。大きめの口元と首筋の細さが幼少期より大人っぽい魅力をかもし出していた。



ただ朱朗と違うのは、自分が小粋な美少女だとは自覚していないこと。劇団では演技力ばかりを鍛えられてきたため、自分の見た目にも相手の見た目にも興味がなかった。まだ7歳だし。



「なあに?…ええと…マイクラで監獄をつくるのが上手な朱朗くん。」

 


朱朗がリュックからファイルを取り出すと、その中から一枚の紙を抜き、星來に見えるようテーブルの上に出した。



「言うよ、僕はイケメンだから言うよ。」


「…うん?これって…なに?こんいん…?」


「婚姻届だよ。」 


「ああ、“こんいん”で合ってた!やったー」


「この漢字、まだ学校で習ってないよね?」


「うん、習ってないね。」


「でも読めた星來ちゃんてかわいいだけじゃなくって頭もいいんだね。」


「ありがとうってお礼を言うわ。」


「星來ちゃん、僕と結婚してください。」


「ありがとう」


「ありがとう?」


「え?なに?わたしと?結婚?そう言ったの??」

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