第35話 エリュシオンの宝
チビノアは、ドラゴンから降下しながら、詠唱を唱えた。
「此の地に闇が訪れたし、此の地に悪がはびこりし……」
手を広げ空中を飛ぶチビノア。
「汝の名において、 我ここに誓わん」
空気抵抗が起きて、服がバタバタとたなびく。
「現世の泡沫、我の力を得よ!!」
チビノアの光が一際大きくなる。
「いでよ!!エリュシオンの宝!!!」
ビナー船の船首に人物が召喚される。
それは智紀の叔父である乃蒼だった!!
チビノアがビナーの船に降りてきて乃蒼と手を繋ぐ。
2つの光が合わさった。。
乃蒼とチビノアが融合した!!
ーーー乃蒼の精神世界で、チビノアが乃蒼に近づく。
「此処は何処?僕は一体……」
「君の為に女神アテーナイエが、……君のお母さんがこの世界を作った」
チビノアがゆっくり言った。
「母さんが……?」
「君の命が、ステファノスだよ。このエリュシオンの宝。よく覚えておいて。……でもこのままでは、魔王ザルガバースを倒したら、君は死んでしまうかもしれない」
「……僕はそれでも構わない。ずっと死にたいと思っていたから」
乃蒼は暗く呟く。
暗晦のステファノス《宝》としての使命は、乃蒼には好都合だった。
チビノアがもう一度手を繋ぎ、二人は緑光に包まれたーーーーーー。
…
「叔父さん!!叔父さん!!」
ドラゴンでビナー船に着いた智紀達は乃蒼を起こす。
「智紀……ずっと、僕の為に頑張ってくれてたんだね……。有難う…」
チビノアと融合した乃蒼は、朧げに話す。
「……叔父さん」智紀は祈るように乃蒼の手を掴んだ。
そこに、四天王バチカルとが囚われたアテーナイエを連れてやってきた。
「アテーナイエさん!!」
「母さん!!」
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