第11話 流浪騎士団の訓練
その日から、流浪騎士達の訓練が始まった。
訓練は、全体訓練と個人訓練で成る。
まず、全体訓練として体力づくりだ。
準備運動、腕立て、腹筋をペアを組み行い、その後に唐檜の森でマラソンをする。往復で20キロの距離を走る。
唐檜の森は薄暗く、細く太陽の光が指していた。木々の緑の匂いがマラソンで呼吸するたびに喉や鼻に入ってきた。迷いの森のようで、流浪騎士団に必死でついていかなければ、迷ってしまいそうだった。
訓練の終わりに流浪騎士団が炊き出しを作ってくれて、皆で食べた。
それが唯一の楽しみだった。
流浪騎士団は寝床を確保するために、テントを張った。智紀達も手伝った。
テントを張る場所は、日陰や木下が好ましい。テントを広げて、ポールを通す。クロスするようにポールを差し込んだら、テントの裾にある四隅のエンドピンに差し込む。インナーテントとポールを接合させる。フロントポールとリバイザーポールを設置し、ペグを打ち込み、テントを固定する。リッジポールを固定し、フライトシートをかぶせ、固定する。フライトシートとインナーテントを接合し、フライトシートをペグダウンさせ、地面に固定して完成だ。夜はテントで疲れてぐっすり眠った。
朝は鳥のけたたましい鳴き声で目が覚めた。
次は個人訓練だ。
魔法の覚え方は、これは例えるなら、現在のコンピューターの処理と似ていた。
脳の記憶領域の一部を作り変え、脳の中にOSをつくり、呪文をソフトとしてインストールしていくようなものだ。
光と史郎は、チビノアから受ける訓練で、魔法のレパートリーを増やしていった。
史郎は黒魔法の攻撃を敵に当てるのが下手だった。
魔法を敵に当てるのは、バスケのスリーポイントシュートやテニス、バレーのシュートに近いようだ。
流浪騎士団の一人、シュトハムが史郎に付いて、徹底的に訓練した。
「コツはターゲットをしっかり見据えて撃つこと。場数と、後は……絶対当たる!!という確信だな!!」ワハハと豪快に笑う。
蓮羽には竜騎士の指導を流浪騎士の一人、ルディンが教えた。
「君は、遠くからでも位置を捉えるのは上手いな。あとは、攻撃するとき、力を一つに集結し、一気に突くこと!必要なことは、怒りの感情だ!!怒りはとてつもないパワーを産むからな。一点集中!!」
蘭には流浪騎士、エヴァンスが付いた。
「グリップを高い位置で握ること。命中精度向上、連射性向上、誤作動防止に影響するからこれは重要だ。反動は銃身の位置で発生する。発射時に手首を支点にして跳ね上がる『マズルジャンプ』を最小限に抑えるには、銃身から支点までの距離が可能な限り短くなければならない」
智紀は、流浪騎士団長、クリスに剣の使い方の基礎を教わった。
教わったのは、真向斬り。頭上に高く振り上げて、『上段の構え』から真下に振り下ろすものだ。
「真向斬りは、強い自信と、何事にも動じない胆力が必要です。君はその素質があるようですね」
と褒められた。
「剣と向き合う事は、すなわち”死”と向き合うということです」
クリスが智紀の目を見て覚悟を諭すように言った。
死、ってなんだろう。蘭や光や史郎や蓮羽にも、叔父さんにも、お父さんにもお母さんにも会えなくなっちゃうのかな。それは嫌だなと思った。でも叔父さんが苦しんでいる。それを助けたい。
智紀は、その日は眠れなかった。
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