第10話 流浪騎士団と小さな男の子

智紀達を助けたのは、十数人かで形成されている流浪騎士団と、小さな男の子だった。男の子は、智紀達と同じ歳くらいで、叔父・乃蒼に面影が似ていた。


「無事かい?」少年が聞いた。

智紀達は黙っていた。

流浪騎士団は暖かな飲み物を用意し、智紀達に振舞った。

「危ない所だったね。あの魔物はシェッディム。魔王ザルガバースの手の者だよ」

少年が言った。

智紀達は、さめざめと泣きだした。強がってはいたが、異世界に突然来て、色々なことがありすぎた。暖かい飲み物で、恐怖と緊張とがいっぺんにゆるんだ。

「無事でよかった」男の子が言った。

「ありがとう」智紀達は男の子と流浪騎士団にお礼を言った。

「君たちは誰?」智紀が聞いた。

「僕は召喚師だよ。チビノアって呼んでほしいな。この人たちはーーーーーーーー」

男の子が振り返って「騎士の心得!!」と流浪騎士の方に向かって言うと、


「一、志誠をつくすこと!!」

「一、公正の道を守ること!!」

「一、勇気の精神を養ふうこと!!」

「一、武勇の血気を戒むること!!」

「一、慈愛を持ち、人格完成につとめること!!」

「一、寛容を常に相手に与えること!!」

「一、礼節を重んじること!!」

「一、奉仕の心を忘れえぬこと!!」


流浪騎士たちは大きな声で一斉に詠唱した。


「この人たちは、元奴隷達でね。奴隷は騎士にはなってはいけないんだけど、皆、騎士になりたくて、こうして流浪騎士団を結成したのさ。元奴隷・流浪騎士団と言って馬鹿にしちゃいけない。本当の騎士よりももっと騎士道に忠実なんだから!」

チビノアは誇らしげに言った。


「そうなんだ。本当の騎士よりずっと強そうだ」蘭が言った。

「僕たちは此処に来てまだ間もなくて、力の使い方がわからないんだ。もしよかったら、君たちに武術を習いたいんだけど」

と、智紀がチビノア達に提案した。


「いいよ。歓迎さ。だけど、僕たちの訓練は容易くはないよ」

チビノアはにっこり笑った。

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