第9話 エリュシオン

智紀は女神アテーナイエの城から、壮大なフィールドに転送された。


どこまでも広大な草原と大地が広がっていた。遠くに松や唐檜トウヒや白樺の樹から生る森や、湖が見え、山脈いくつも見えた。そのうちの数座の山々は冠雪していた。世界を囲むコクマー海流の上を偏西風が吹いている。偏西風が水分を含んでいるので、水には困らない地域だった。海岸沿いのギザギザとした地形は、フィヨルドだった。フィヨルドというと、魚が取るのに適していたりするんだろうか。釣りも出来そうだ。

牛の群れや、コヨーテの群れが大地を走っていた。


「すごーい!ゲームのオープンワールドみたい!!」光が歓声をあげた。


「ここが、エリュシオンの世界……」

その壮大さに、智紀達は感銘した。


智紀達はエリュシオンの地を走り、高い丘から見える限りを眺めた。

動物の群れが見えたので、そこまで走って行った。

しかし、それは動物ではなかった。

黒いもやに覆われた、小さな悪魔のような魔物が智紀達を襲ってきたのだ!!


「モンスターだ!!」

智紀達は、戦闘態勢に入った。


しかし、啓受を受けたばかりで力の使い方がわからず、智紀の剣はなかなかモンスターに当たらなかった。蘭も銃の扱い方がわからず、撃った反動でよろめいたりしていた。打った弾はモンスターに当たらなかった。史郎に限っては、あらぬ方向に黒魔法の炎を放っていた。竜騎士の蓮羽は上空まで飛び、時々槍でヒットさせたが大抵はミスだ。


モンスターの鋭い爪が智紀を裂く。血の出ている所から、ドンドンと波立てるように鈍い痛みが沸いてくる。

「痛い…、すごく痛いよ」

これはゲームでなく、現実なのだ。

「でも、僕は…僕は叔父さんを必ず救い出す!」

智紀の剣がクリティカルヒットして、モンスターの一人をやっつけた!


「智紀!すごい!!」皆は喜んだ。


光は智紀の傷口を白魔法で癒した。


モンスターを一人倒したが、モンスターの群れはまだ湧いてくる。

モンスターに囲まれた智紀達。絶体絶命である。


その時。


ひとつの閃光がモンスターたちを切り裂いた。

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