第7話異世界へ

「いてて…皆無事?」

智紀、蘭、光、史郎、蓮羽は、天井の高い大きな城の中で目覚めた。

神の加護を受けた王国として城の床には、水晶、オリーブの葉、動物達、雲、人々の曼陀羅の絵のモザイクと、天井には星々が描かれており、それは全宇宙を表現していた。教会のような造りは、女神と王への強い信仰心の表れであり、重さ700キログラムのシャンデリアは純金製だった。


智紀達が城に見惚れていると、

「なんと!魔王ザルガバースの手の者か?王・エリュオニム様が魔王討伐に出かけて不在の時に困ったコロ、困ったコロ」

燕尾服を着て、方眼鏡モノクルをしている執事風な初老のコオロギのような生き物が現われ、喋っている。

「何だこの生き物?」

智紀たちは目を白黒させた。

「コロ虫に会うのは初めてかね?この世界のものではないコロね」

執事風のコオロギのような生物が言った。

「僕らは魔王ザルガバースをやっつけにきたんだ!」智紀が言うと、

「なんと!小さき者たちよ。だがお前さんたちは、この世界のものではない故、力を持ち合わせていないようだ。この城に住む、女神アテーナイエ様から力を啓受してもらうがよい。案内するコロ。私はこの城の執事。セバスチャン・コロ。コロ爺と呼んで下されコロ」


女神アテーナイエ、王エリュオニム、魔王ザルガバース……。叔父が話してた人物の名前だ。

ここは一体どこなんだろう。智紀達は、コロ爺の後をついていった。


「お掃除してもきりがないわ。なにせ440も部屋があるんですもの」

天使の姿をしたメイド達が城の中を箒を持ちながら、あたふたと急いでいる。


火を急いておこしましょう。

282の暖炉に!

薪をもって!

早くしないと、昼になって暖かくなってしまうわ。

朝燃やした暖炉はもう白く灰になってしまった。

夜が来るので、また火を急いでおこしましょう。

282の暖炉に!

薪をもって!!


天使メイド達は薪を片手に歌いながら仕事をしていた。


女神アテーナイエに会うために、智紀達は84もの階段を上がっていかなければならなかった。コロ爺が道を間違えて、5回も同じ階段を上った。

「コロ爺さん、まだアテーナイエの所には着かないの?」

息も絶え絶え、智紀たちが言った。

「小さき者たちよ。だらしがないコロよ」

コロ爺は笑った。


階段を上っていくと、最上階から、美しい歌が聞こえてきた。

歌は、すべてのなつかしさを持っているような響きがした。

「また、天使メイドが歌ってるの?」智紀が聞いた。


「女神アテーナイエ様じゃ」


コロ爺は最上階の扉を開けた。

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