第5話 嬉しい訪問者 

病室に行くと先客がいた。

五十恰好の、男の人が2人、女の人が2人乃蒼の見舞いに来ていた。

乃蒼に聞くと、義光の大学時代の親友達らしい。

犯人たちの他に、仲良くしていた親友達だった。

ウエーブがかかった髪のジゴロ風の男が黒澤。

「はい、お見舞いだよ。レゴにハマってるんだってね。乃蒼君におじさんからのプレゼント」

黒沢は手品師の様にレゴを懐から出し、乃蒼に渡した。

「乃蒼君、どんなに心配したか!自ら命を絶とうとするなんて。俺に一言連絡してくれれば、こんなことにはならなかったのに…」

星哉さん…、と乃蒼が言った。

星哉は、義光ら両親を失った乃蒼に肉親のように付き添ってくれた人だ。智紀も何度か顔を見合わせている。星哉は、優しそうな、正義感の強そうな顔をしていた。

加奈子という女性が、

「私も15年前の事件の事時々思い出すの。大学の時は楽しかった。楽曲研究会ってみんなでサークル作って、義光くんが作曲して、由紀さんがいっつも嬉しそうに聞いてて。黒沢君が指揮者のフリをふざけて遊んで、ユイトくんが、研究会議だって会議ばっかり開いて。星哉くんが感想を話して、タカくんが呆れながら付き合って。私と小夜も文句言いながら皆に注意して…楽しかった。ザルカワ君は皆の後をいつも追っていた。でもあんな事件がおこるなんて。信じられない」加奈子の話はまだ続きそうだったが、

小夜が「加奈子、乃蒼君が事件の事思い出しちゃうから気持ちはわかるけど…」と話に釘を刺した。

星哉さんが、智紀たちの方を見て、「乃蒼くんの甥っ子君と友達なんだってね。おじさん、おばさんばっかりでつまらないだろう」と笑った。

智紀たちは、叔父に事件の事を聞こうと思っていたけれど、言えず、その日は解散した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る