第3話 叔父とレゴの世界と僕

次の日、智紀が学校から帰って、仕事を抜けてきた父と一緒に叔父が入院している病院に行った。病院の事務で入院手続きの書類を出して、2階のナースステーションで面会用の名前の記述をしてから、叔父の病室に行った。叔父は個室だった。

「どうだ?様子は」と正が言うと、

「今日はアテーナイエの夢を見たんだ。アテーナイエは今日も綺麗だったよ」

と叔父がニコニコしながら話した。

「そうか。良かったな。なにか必要なものはあるか?」正が言うと

「兄さん、ピアノが弾きたいんだ。毎日弾かないと腕がなまってしまうよ。キーボードでもいいんだ」

キーボードは、充電のコードで首を絞めてしまう可能性や音が他の病室に漏れてしまうので、看護婦から止められていた。

「それは持ってこれないんだ。ごめんな。他に何か欲しいものはあるか?」

「…それじゃ、レゴがほしい。人形ついてるもの」と叔父・乃蒼がいった。

「レゴなんて、子どもみたいだな。分かった、買ってくるよ」正が笑いながら言った。


スーパーや衣服、おもちゃ、雑貨等を販売している複合施設に行き、おもちゃ売り場に行った。

「こうゆうのは智紀の方が詳しいんじゃないのか?智紀にも一つおもちゃ買ってやるから、叔父さんのレゴ良いの選んでくれ」と父・正が言った。

智紀は叔父さんにレゴセット・人形付きを選び、自分には新作ゲームを選んだ。

「ちゃっかりしてんなぁ」父・正が笑った。

「おっと、時間だ。仕事に戻らなきゃいけない。理沙は仕事抜けられないっていってたし、智紀、叔父さんにレゴを病院まで届けてもらえないか?」

「わかった!!」智紀は任命された。


叔父・乃蒼にレゴを渡すと、「ありがとう、智紀」とほほ笑んだ。

叔父・乃蒼は城を作り始めた。

智紀は次々と出来てくる城に胸が高鳴った。

「叔父さん、マインクラフトとか上手そう」と智紀がいうと、

「智紀も一緒に作ろう」と叔父が言った。

二人でレゴの城を作り始めた。

「青い屋根が良いな。白い壁で漆喰で塗られているんだ」

叔父・乃蒼は作りながら言った。

「440の部屋、282の暖炉、84の階段があるんだよ。周りに海があるんだ」と智紀が言う。

「白い銀鳩が沢山止まってるんだよ。庭には綺麗な黄色いダリアの花がいっぱいあって」と叔父が話す。

智紀は楽しかった。叔父も笑ってた。

あっという間に城は出来た。

「この城にはアテーナイエという綺麗な女神様が住んでいるんだ」

叔父・乃蒼がそう言って、女の人のレゴの人形を城の庭に置いた。

「エリュオニムという王様がいて、アテーナイエと住んでるんだよ」

叔父が、王様のレゴの人形をアテーナイエの人形の隣に置いた。

その後、叔父と僕は、船と街を何個か作った。

「魔法使いサムソン、騎士ジークフリート、巫女ネイト、女戦士アンナがいる」

つぎつぎとレゴの人形を置いていく叔父。

「サムソンは一匹狼。ジークフリートは優しい。ネイトは泣き虫、アンナはお調子者」

叔父が説明する。

「でも…でも…魔王ザルガバースが…魔王ザルガバースが…」

「う、ああああああああああああああ」

叔父が錯乱した。レゴのお城を壊してしまった。

「叔父さん!!」

「叔父さん、落ち着いて!!僕がやっつける!!僕が魔王ザルガバースを必ずやっつける!!」

智紀は叔父を抱きしめて言った。

叔父は涙を貯めながら智紀を見つめた。

「だから、泣かないで」

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