第2話 真夜中の衝撃

コンサートが終わり、蘭も光も蓮羽も史郎も興奮ぎみだった。


智紀が、帰り道で、「叔父さんは宝物を隠してると思う」

そういうと、蘭が「ステファノスかな?」と顔を輝かせた。

ステファノスはこの友達仲間しか知らない宝物の名前だ。

光は「きっと持ってるよ!」とはしゃいだ。

蓮羽は「そうかもな」と言った。

「あれ…蓮羽、智紀の叔父さんの事を嫌ってたんじゃないの?」史郎が言うと、

蓮羽は「あぁ?」と史郎を窘めた。

「ぼ、僕もそう思ってたところだよ」史郎が言った。


皆と別れて、その日の夜、叔父の様子が急変したーーーーーーーーーー。

薬を大量に飲み、自殺未遂をした叔父。いわゆるOD(オーバードーズ)ってやつだ。


父の正と母の理沙が急いで叔父の家に行こうと車のエンジンをかけた。

「僕も行く!!」

智紀が言うと、正は「駄目だ!!お前は家に残っていろ」と示唆した。だが、智紀は車に乗り込んだ。

叔父の家に行くと、叔父は朦朧として、

「魔王が来るんだ…怖いよ…」と子供に戻ったように繰り返して言っていた。

正は「今日は人がいっぱいきたからな。頑張ったもんな、偉いぞ。兄ちゃん来たからな」と抱きおこし、救急車を呼んだ。

救急隊に年齢や病状などを正が話し、叔父と一緒に救急車に乗り込んだ。

母理沙が車を運転して、智紀と車に乗り、救急車の後についていった。

病院にたどり着いた叔父は、緊急室で胃の洗浄をした。

正は緊急室の前に立って動かなかった。

母理沙と智紀はTVのある休憩室の椅子で、待機していた。


「智紀は置いてくれば良かったね」ショックを受けている智紀に理沙は言った。

智紀は首を横に振った。

母・理沙から叔父・乃蒼は、「解離性PTSD」という精神疾患を持っていると伝えられた。

もう誰もいなくなった暗い病院で、緊急室の掲示板の文字の光と、火災自動報知器のランプだけが煌々としていた。

智紀は祈るような気持ちで叔父が出てくるのを待ったーーーーーーーーーー。


何時間か経って、叔父が緊急室から出てきた。

叔父は助かったようだ。


(良かったーーーーーーーーー)


正が「乃蒼は入院になるみたいだ。俺が付き添ってるから、悪いけど、乃蒼の家に戻って服や下着などを持ってきてくれないか」と理沙に頼んだ。

理沙は智紀と叔父・乃蒼の家に車を走らせた。

叔父の家は整理されていたが、どこに何があるのかわからず、混乱した。

が、母・理沙がタオルや、何日かの下着と服を叔父の家から探し出した。

「お母さん、なんでわかるの?」智紀が言うと

「母の勘。智紀が小さい頃におもちゃを隠してるの見つけるより楽だわ」と笑った。

「歯磨きこやスキンケア用品は新しい方がいいね。ドラックストア、まだ空いているかしら」と、今度はドラックストアに車を走らせた。

すべてが揃い、叔父と父・正が待っている病院に行くと、叔父が落ち着いてきたようで、

「智紀、義姉さん、ごめんね」と謝った。

看護婦が入院手続きの質問を叔父・乃蒼にした。

「確認のために、病状が出た理由と出た時期を教えてください」と看護婦が質問した。

母・理沙は「智紀は席を外しなさい」と智紀を促した。

智紀は、暗くなった病院で、売店も閉まっていたので、自動販売機でコカ・コーラを買って誰もいない待合室で飲んで待っていた。

しばらくすると、父と母に合流した。叔父は病室にもういるらしい。

時間も遅いし、面会時間もとうに過ぎているということで、3人は帰された。

こうして長い一日は終わったーーーーーー。

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