僕は異世界であなたの宝物を捜し出す

御國漣一

第1話 叔父のコンサート

今日は、叔父のピアノのコンサートの日。 会場は満席で、黒と紫の装飾が施されている。新しい会場で、檜の匂いと満席の人から香る独特の匂いに心が踊った。

僕は、智紀とものり。小学4年生。今日はお父さんのただしと、お母さんの理沙りさ、友達のらん蓮羽れんはひかり史郎しろうとコンサートに来ている。


「人が多いわ…」母の理沙が人々の喧騒を眺めながら、ぽつりと言った。

「なにせ、TVでも紹介された今注目の新鋭ピアニストだからな。俺も兄として鼻が高いよ」父の正が嬉しそうに笑った。


叔父の乃蒼のあは22歳の青年で、今話題のピアニストだった。その心に精神疾患をもっていた。15年前の事件でーーーーーーーーーーーー


「檜の匂いがするね。まだかなぁ」友達の中で、唯一の女のコ、光がワクワクしながら智紀に話す。

そこに、

「兄さん, 義姉さん、智紀、智紀の友達達…今日は来てくれて有難う」

叔父の乃蒼が智紀たちの席まで来て、挨拶しに来た。


史郎が礼儀正しく、「こんにちは」と叔父・乃蒼に言った。

「あぁ?」叔父に嫌悪感を持っている蓮羽は史郎を窘めた。

「智紀のお父さんとお母さんがいるからね…」いつも蓮羽に強く言われる史郎も今は強気だった。

蓮羽の両親は叔父が精神疾患の事を家で色々蓮羽に吹き込むのだ。智紀は自分も嫌われている気持ちになった。

「俺、ずっと智紀の叔父さんのコンサート楽しみにしてたんだ~!!」

蘭が蓮羽の最悪な雰囲気を変えるように話した。

「乃蒼、がんばれよ~」

父の正が明るく言った。

「叔父さん、がんばって!!」

僕も叔父さんと握手しながら励ました。


会場がざわめく。


コンサートが始まった。舞台に叔父が現われると、観客が沸き、拍手が起こった。

スマホのカメラのフラッシュが瞬いた。


演奏が始まると、皆は黙って聞き惚れた。

演奏は素晴らしいものだった。


蓮羽は、「へぇ…」と驚いて感心した。

智紀は誇らしい気持ちになった。


舞台でピアノを演奏している叔父は美しかった。

でも、苦しみの表情をしていた。


こんなに、叔父のピアノがこんなに美しいのは、宝物を隠しているからだ。


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