2章17話: 「影に潜む脅威」
男の雰囲気が変わった。その瞬間、ドス黒いオーラが彼を包み込み、まるで周囲の空気が一瞬で冷たくなったかのようだった。彼はニヤリと笑い、彩菜に向かって警棒を振り下ろしてきた。
「やめて!」彩菜は悲鳴を上げた。その瞬間、おばぁが静かに口を開いた。
「我が守護の力よ、今ここに集え!」
おばぁの祈りの言葉が響き渡り、彩菜の周囲に透明な膜が形成される。警棒はその膜に当たり、彩菜には届くことなく弾かれた。男の驚愕の表情が一瞬だけ浮かんだが、すぐにニヤリとした笑みが戻った。
「何だ、その程度か…」彼は冷笑し、さらに攻撃を続けようとした。彩菜の心臓は激しく鼓動し、恐怖が全身を駆け巡る。
彩菜の悲鳴に気づいたのか、奥からゾロゾロと人々が出てきた。彼らの中には、先ほど責任者を呼んでくると言っていた青年も含まれていた。「どうしたんだ?」彼は警棒男と彩菜を交互に見ながら、状況を把握しようとした。
警棒男は何も言わず、ニヤリと笑いながら「死ね」と一言吐いた。再び警棒を振り下ろそうとするが、その瞬間、体格の良い男性が彼を押さえ込んだ。
「これ以上は許さない!」その男の声に、警棒男は一瞬驚いたようだったが、すぐに抵抗を試みた。しかし、その瞬間、おばぁの祝詞が響き渡った。
「古の力よ、我が手に集い、穢れを浄化せよ!」
おばぁの言葉が空気を震わせ、警棒男は一瞬硬直した。彼の体からドス黒いオーラが抜け出し、意識を失って地面に崩れ落ちた。
その後、周囲の空気が少しずつ和らいでいくのを彩菜は感じた。ドス黒いオーラが消え去った後、警棒男は普通の人と変わらない表情を取り戻した。だが、その変化がどれほど恐ろしいものだったかを、彩菜は直視することができなかった。
体格の良い男性は、彩菜たちの無事を確認した後、息を整えながら謝罪の言葉を口にした。「申し訳ありません。あの男は、最近のストレスや恐怖でおかしくなっていたんです。生存者を守るためにここにいるはずが…」
「ここは、現在北谷の大騒動から逃げ切った者たちや、宜野湾祭りの混乱から避難してきた人たちを匿っています。しかし、食料が思っているより少なくて…」男は悲しげに続けた。
「外食店舗の調理器具を使おうとしても、ガスが止まってしまって、今朝から電気も切れていて、携帯の電波も圏外になっている。」男の言葉には、緊迫した状況が色濃く滲んでいた。
彩菜はわずかな食料を分けてもらったことに感謝の意を示した。「本当にありがとうございます。私たちも何とかしなければ…」彼女の言葉には、未だに心の中に残る恐怖と決意が込められていた。
そして、彩菜は男に北谷の大騒動について尋ねた。「北谷では一体何が起こったのですか?」
男は一瞬躊躇ったが、何かを思い出すように目を細めた。「ああ、それは…状況が不安定すぎる。だが、我々も外の様子を見守り続けている。生き残るためには、慎重に行動しなければならない。」
その言葉に、彩菜は少し胸を張り、再び戦う決意を固めた。今、目の前に立っているのは彼らの生存者たちであり、協力し合ってこの危機を乗り越えなければならないことを、彼女はしっかりと理解した。
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