2章第16話: 不安と警戒の交錯

ビーチに向かう途中、彩菜とおばぁは緊張感を保ちながらも、心の中に一瞬の緩みを感じた。特に彩菜のお腹が「グゥ〜」と鳴いたことで、二人の緊張は一瞬ほぐれた。しかし、その安堵もつかの間、彩菜はビーチの異様な気配を感じ取り、心を引き締めた。


「このままビーチに行くのも不安だな…」と彩菜が呟くと、おばぁが「宜野湾シティで食料を調達してから向かおう」と提案した。彩菜はその提案に頷き、二人は急いで宜野湾シティに向かった。


宜野湾シティに到着すると、周囲には食品館やバラエティショップが広がり、2階には飲食店やゲームセンターがあった。しかし、何かが違った。静まり返った通りには、かつての賑やかさが影を潜めていた。


「まずは食品館に行こう」とおばぁが指示し、二人は急ぎ足で向かった。だが、入口を入ると、目の前にあったのは、買い物カートで道を塞がれた光景だった。椅子やテーブルが重なり合って、まるでバリケードのように道をふさいでいた。


「これは…バリケードみたいだ」と彩菜が呟くと、おばぁも同様のことを思った。「誰かがここを防いでいたのかもしれんな。」


二人は力を合わせてこのバリケードをどかそうとしたが、テーブルやカートが重く、まったく動かなかった。そこで、彩菜はふと思いつき、「この中には生存者がいるかもしれない。声をかけてみよう」と提案した。


おばぁは頷き、二人は声を合わせて呼びかけた。「誰かいますか?」


その時、バリケードの向こうから若い青年が姿を現した。彩菜と同じくらいか、少し若い見た目の彼は、警戒しながら掃除道具のモップを構えていた。


「何者だ?」彼は不安そうに問いかけた。


「私たちは祭りの準備をしていた者です。」彩菜はできるだけ落ち着いて言った。


おばぁも加わり、「ただの通りすがりだ。」と言った。


青年はその言葉に少し警戒を緩めたが、依然として不安な表情を浮かべていた。「ここには他にも生存者がいる。私たちも外の脅威から逃れてきたんだ。」


その時、青年の後ろから、もう一人の人物が現れた。彼は警棒のようなものを構え、緊張した面持ちで周囲を見回していた。彩菜は彼を見て驚いたが、おばぁは冷静に青年に視線を向けながら彩菜に小声で話した。


「どうする?この人たちが信用できるか?」


青年は警戒しつつ、後から来た仲間に視線を向けた。


「私たちは外の脅威から逃げてきました。」彩菜は声を強め、彼らに信頼を求めた。心の中では、この人たちが協力者になることを願っていた。


おばぁも続けて言った。「外には何が待ち受けているかわからないからな。」


青年はしばらく考え込んでいた。


「ここの責任者に君達のことを相談しないと、僕では君たちを中に入れる許可は出せない」


そう言って青年は、遅れてきた同僚に小声で話し、足早にその場を去っていった。


彩菜はこの緊張しないといけない状況で、またしても「グゥ〜」とお腹を鳴らしてしまった。


「ご、ごめんなさい」彩菜は恥ずかしそうに、俯きながら言った。


「もし私たちが邪魔だというなら、少しの食料を分けてもらえたら、すぐに出ていくのじゃが」おばぁが残った男に言ったが、男は一向に動かなかった、それどころか少し様子がおかしい感じがした。


彩菜とおばぁは顔を見合わせて、男の様子をみていた。

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