2章第15話: 異変の兆し

彩菜とおばぁは、国道58号線に到達し、安堵の息をついた。祭り会場からの長い道のりを歩き続けたが、これまで目にしたものは荒れ果てた車と、コンビニのゾンビだけだった。心のどこかで、まだ生存者がいるのではないかという希望が残っていた。彩菜は、その希望にすがるように北上することを決意した。


国道に出ると、アミューズメント施設「ラウワン」が視界に入り、その向かいには「宜野湾シティ」というショッピングセンターが佇んでいる。その先には宜野湾港が広がり、さらに奥には美しい宜野湾ビーチが見える。人々が集う場所であるはずのこの場所に、果たして誰かいるのか?


「ここまで来れば、流石に誰かいるだろう…」彩菜はその期待感から、足が自然と速くなっていった。彼女の心に芽生えた希望が、歩幅を広げさせていた。その姿を見て、おばぁは微笑みながらも、少し警戒しながら後をついていく。


「無理に急がんでもええから、慎重に行こうな」とおばぁは心配そうに声をかけたが、彩菜の心は希望に満ちていた。


しかし、ラウワンや宜野湾シティが近づくにつれ、何かがおかしいことに気づく。周囲を見渡すと、国道にも駐車場にも、一台の車も停まっていなかったのだ。いつも賑わっているはずの場所が、まるで人の気配を失ったような静けさに包まれている。


「おばぁ、なんで車が一台もないの?普段ならこんなに人がいるのに…」彩菜は不安に思い、足を止めた。彼女の表情が曇り始める。


おばぁはその様子を見て、心に不安を抱く。「ああ、何かがおかしい。ここまで人がいないとは、あまりにも異常じゃ。」と、おばぁは冷静に言った。


「でも、もう少し進めば誰かいるかもしれないよ!」彩菜はその希望にしがみつこうとしたが、どこか心の中で不安が膨らんでいくのを感じた。


その瞬間、ビーチの方からとてつもない、異様な気配が流れ込んできた。おばぁはその気配に敏感に反応し、立ち止まった。「彩菜、ちょっと待ちなさい。」と彼女は言い、警戒しながら周囲を見渡す。


「何か、感じるの?」彩菜は不安そうに尋ねた。


「うん…この気配はただの人間のものではない。怨霊か、ゾンビの気配じゃ」とおばぁは答えた。その表情は真剣そのもので、彩菜もその重さを感じ取った。


「逃げた方がいいんじゃない?でも、ここまで来たら…」彩菜は葛藤しながらも、足が動かずにいた。目の前には、期待していた場所があるが、同時に未知の恐怖が迫っている。


「まずは、周囲を確認する必要がある。無闇に進むのは危険じゃ」とおばぁは冷静に指示した。


彩菜はおばぁの言葉を聞いて、一旦深呼吸をする。「わかった。まずは慎重に行こう。」二人は互いに警戒しつつ、気配が漂うビーチの方へと向かうことにした。


彼女たちの心の中には、恐怖と期待が交錯していた。果たして、目の前の異常な状況の真相は何なのか。運命が二人を待ち受けている

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