2章第14話: 不安の中の決意

彩菜とおばぁは街道を歩きながら、生存者を探して目を凝らした。しかし、周囲には誰もおらず、静けさが不気味に漂っていた。二人の足音だけが響き、道の両側には無残にぶつかった車や、扉が開けっ放しの店舗が広がっている。まるでこの世界で生き残ったのは自分たち二人だけかのように感じ、恐怖が心を掠めた。


「なんでこんなことになってしまったんだろう…」彩菜は低い声で呟いた。目の前にある無人の景色が、彼女の不安を増幅させる。「あのゾンビがいたコンビニ以外、誰もいないなんて…」


おばぁは、歩きながら周囲を警戒しつつ答えた。「おそらく、祭りの人々は避難したのかもしれん。しかし、ここまでゾンビが来ているのなら、あちこちで混乱が起きているはずじゃ。」


彩菜はおばぁの言葉を反芻しながら、ゾンビにされた者たちがどこに消えたのか、コンビニの客や車の所有者たちはどうなっているのかという疑問が次々に浮かんでくる。「本当に、どうなったんだろう…」その思いは彼女の心を重くした。


「今は考え込んでいても仕方がない。生きている人を早く探さなければ。」おばぁが振り返り、彩菜の目をしっかりと見つめた。「北谷に戻って、おばぁ家に向かおう。何か手がかりが見つかるかもしれん。」


その言葉を聞き、彩菜は頷いた。「うん、そうだね。早く行こう!」と意を決して、おばぁの後を追うことにした。北谷の家へ向かう途中で何か食料でも調達できれば、心強さが増すはずだ。


二人は慎重に道を進みながら、時折周囲を見回した。空は曇りがちで、薄暗く感じられる。普段なら賑わっていた街道も、今は静寂に包まれ、ただ不気味な空気が流れている。二人はお互いに無言の意志を交わしながら、時折足元を確認しつつ進んでいった。


「もし本当に生存者がいたら、きっとこの道を通っているかもしれん」とおばぁは言った。「何か手がかりが見つかるといいが…」


彩菜は緊張感を保ちながらも、その言葉に希望を抱いた。「絶対に、誰かがいるはずだよね。私たちだけじゃない、他にもきっと…」


街道を進む中で、時折不安な音や動きに敏感になりながらも、彼女たちはおばぁの家に向かう決意を固めていた。だが、街道が進むにつれて、何も見つからないことに焦りが募り始めた。


「やっぱり、食料も調達しないと…」彩菜は何度も呟き、周囲を見回すが、やはり誰もいない。彼女の心に恐怖が忍び寄り、何か大きな運命が迫っているような気がしてならなかった。


「いざとなったら、何か考えなきゃならん。私たちが逃げるだけじゃなく、立ち向かう覚悟も必要じゃ」とおばぁが言うと、彩菜はその言葉を心に刻んだ。


「そうだね、私も戦わないといけない。自分の力を信じて…」彩菜は決意を新たにし、北谷に向けて進む。


二人の足取りは次第に速くなり、何かが待ち受ける未来へと向かっていた。無情な運命が二人を試そうとしていることを感じながらも、希望を持ち続け、歩みを進めるのだった

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