2章13話:暗闇の前触れ
彩菜とおばぁは、祭り会場を一度離れることに決めた。朝からの慌ただしさに、さらにはお清めの儀式まで行ったため、さすがにお腹が空いていた。おばぁが「一息入れて、何か食べるか」と提案すると、彩菜も賛同した。
「それじゃ、コンビニにでも行こうか」と彩菜が言うと、二人は何気ない会話を交わしながら、コンビニへと向かっていた。
歩くうちに、祭り会場だった場所が遠ざかり、周囲の静けさが彼女たちの心をさらに不安にした。しかし、その不安が的中し、たどり着いたコンビニで目にした光景は、彼女たちの平和な日常を一瞬で覆すものだった。
店内には、数名の店員が立っていた。その姿は、普段の彼らとはまるで異なっていた。肌は青白く、無表情で動きもぎこちない。よく見ると、そこにいたのはかつての人間ではなく、今やゾンビと化していたのだ。さらに、彼らの周囲には客の姿も見えたが、その全てがゾンビに変わり果てていた。
「こ、これは…」彩菜は言葉を失い、恐怖で硬直した。おばぁもその光景に目を見開き、二人の心には恐怖が広がった。
「このままでは、私たちが見つかってしまう!」おばぁが冷静に囁いた。その瞬間、二人は運よくコンビニの前に立っており、ガラス越しにその異様な光景を見ていたため、ゾンビたちには気づかれていなかった。だが、彼女たちの心は急速に冷えていく。
「私たちがここにいるって…ばれたらどうなるの?」彩菜は震える声で尋ねた。目の前の恐怖に直面し、自分たちが無防備であることに不安が募った。
「逃げることも考えなきゃならんが、ゾンビが増えているということは、祭りの混乱が始まっているという証拠じゃ。何が起こったのかを確認しなければならん」とおばぁは言った。
しかし、彩菜は目の前の状況を考えると、恐怖が抑えきれなかった。あの店内にゾンビがいるという事は他の場所でもゾンビがいるんじゃ。「このまま放置していくのは…、どうしようもないの?」
空腹の声と恐怖が交錯し、彩菜は一瞬、どうしたらいいか迷った。しかし、結局、別のコンビニに向かうことに決めた。恐怖心が勝り、今の状況から逃れることが一番だと判断したのだ。
「じゃあ、別のコンビニに向かおう」とおばぁが提案し、二人は振り返り、街道へと向かう。
大通りに出ると、二人はまたしても絶望することになった。そこには、今まで目にしたことのない光景が広がっていた。街の通りには、いつもなら車が多く走っているはずなのに、今目にしている光景は、道路には何台もの車がぶつかったのか、煙をあげている車やドアが開けっ放しの状態で放置していたりしている光景が広がっていた。
「これはいったいどういう…」おばぁは言葉を失った。彩菜も同様に、目の前に広がる光景に愕然としていた。明るい街の雰囲気を一変させている。
「一晩でいったい何が起こったっていうの」彩菜は思わず呟いた。
おばぁは、そんな彼女の心の声を察したのか、今はとりあえず生存者がいないか探さなければ。「行動しなければならん。生き残った人々を守るためにも、戦う準備をせんといかん。」
彩菜はおばぁの言葉に背中を押され、決意を新たにした。「うん、私も、何とかしなければ…」
祭りの夜に待ち受ける運命が、確実に迫っている。二人は心を奮い立たせ、再び動き出すことを決意したのだった。
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