第2章 第4話:混乱の中心で

優斗が現場に到着した時、すでにその場は混乱の渦中にあった。目の前には信じられないような光景が広がっており、心臓が再び早鐘のように打ち始めた。エスカレーターを降りると、視界の先に暴徒化した人々が警備員に押さえ込まれていたが、「それ」はまるで人間ではない力を持っているかのように、警備員たちを次々と押し除けていた。


「こんな力…普通じゃない…」優斗はその光景に目を奪われ、足が一瞬すくんでしまった。


数人の警備員が懸命に「それ」を取り押さえようとするが、その力は警備員たちの全力を軽々と打ち破る。警備員たちが悲鳴を上げながら地面に叩きつけられる様子は、ますます優斗の恐怖を掻き立てた。


「どうなってるんだ…?」


その時、背後に気配を感じて振り返ると、そこには我如古が立っていた。今来たばかりのような息遣いで、周囲の異様な状況を睨みつけていた。優斗はすぐに駆け寄り、我如古に何が起こっているのかを確認した。


優斗は冷静さを取り戻すために深呼吸をした。目の前の状況が異常だということは確かだが、まずはできる限りの対応をしなければならない。どうにかして、今の状況を一旦沈静化させる方法を考えた。


「そうだ…WAX作業の道具なら…」


瞬時に思いついたアイデアに基づいて、優斗は急いで内線電話に手を伸ばした。すぐに島袋に連絡を取る。


「島袋、優斗だ。今すぐ上原さんにWAX作業一式の道具を持ってきてもらってくれ。この状況で使えるかもしれない。」


内線越しの島袋は少し驚いたようだったが、「了解。すぐに準備する!」と返答が返ってきた。


WAX作業の道具は、重たい機械やワックス自体を利用して、相手の動きを封じることができるかもしれないと、優斗は考えていた。今の自分にできる限りの対策を即席で組み立てながら、あの異常な力を持った存在をなんとか押さえ込む方法を模索していた。


「これで少しでも時間を稼げれば…」


優斗は震える手で額の汗を拭いながら、これから始まる未知の戦いに備え、再び現場を見つめた。

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