第2章プロローグ:蠢く怨念
沖縄の夜空は、静かに闇が包み込んでいく。宜野湾祭りを目前に控え、街は表向きは賑やかさに溢れていたが、その裏側では不穏な気配が静かに蠢いていた。
遠く北谷の地では、怨霊の力に操られたゾンビたちが、じわりじわりと南へと進行していた。彼らの先頭にはグールが立ち、道を遮るものを次々と蹴散らしながら、目指すは宜野湾の祭りの場。彼らが進む330号線の住宅街は、異様な静寂に包まれており、誰もその行進に気づく者はいなかった。
だが、その闇の中で、ある影が群れを追いかけていた。人間の気配を感じさせぬ動きで、音を立てることなくゾンビたちに迫っている。彼女の目的は不明だが、その動きには確かな意志が込められていた。
一方、宜野湾の空気は、祭りの準備で熱気が高まっていた。大きな提灯が通りに掲げられ、出店の屋台が並び、子供たちの笑い声が響く。しかし、この賑やかさの裏には、何か見えない不安がじわじわと忍び寄っていた。無邪気な笑顔の中にも、時折、ふとした瞬間に感じる静けさが、彩菜の心に影を落としていた。
彩菜はその影を無意識に感じ取りながらも、まだその正体に気づいてはいなかった。彼女が今感じているのは、これから自分に降りかかるであろう重大な使命への不安と、未だ覚醒しきれない自分の力に対する苛立ちだった。だが、その感覚の裏に潜む、もっと大きな脅威が迫っていることに、彼女はまだ気づいていない。
一方、浦添にいる優斗は、全く異なる場所で、日常の業務に追われていた。宜野湾祭りの影響でショッピングセンターは普段以上に混雑し、客足が途絶えることはない。優斗は、仕事に集中しようとするたびに、数日前に遭遇したゾンビの光景が頭にちらつき、振り払うことができなかった。
「何かが迫っている…」そう心の中で呟きながらも、彼はまだ現実の脅威として受け止めることができないでいた。だが、何かが間違いなく動いていることは、彼の直感が告げていた。
夜はさらに深まり、宜野湾祭りの会場では、いよいよその開幕が近づいていた。だが、祭りの華やかさとは裏腹に、影は確実に近づいている。ゾンビの群れ、怨霊、そして未知の力が交差する運命の舞台が、いままさに幕を開けようとしていた。
彩菜は、心の中で何度も自分に問いかけていた。「私は本当にこの力を使いこなせるのだろうか?」彼女の不安は消えることなく、むしろその重さを増していった。だが、それでも進むしかない――何かが起こる前に。
宜野湾祭りの3日間は、彼女にとって、ただの祭りではなく、ゾンビとの戦いが始まる日であることを、彩菜自身も薄々感じていた。決意を固めるには、時間はあまり残されていない。
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