第137話

虚しさをかき消すように

昨日の帰りにコンビニで買った週刊誌を手に取る。

君が連載している小説が載っているそれ。


君が今書いている小説。

『 王子様がいないシンデレラ 』


何不自由なく育った貴族の娘が

家の決まりでお見合いをさせられるところから

物語が始まる。


蝶よ花よと育てられた彼女は

外の世界を知らない。

それゆえ"恋"がどういうものかも分からない。



「 広い世界を自分の目で見て、感じて、

世界にたった一人の運命の王子様に逢いたい。

わたくしから愛してしまうような殿方に

逢いたいの。 」



けれど、彼女の前に現れるのは

いつも政略結婚に相応しい相手ばかり。

彼女の意思など関係ない。

彼女の父親である公爵の機嫌ばかりを伺う

彼女にとってはつまらない男ばかりだった。



「 嗚呼、どこにいらっしゃるのですか。

わたくしの運命のプリンスは。 」



・・・


そんなシンデレラらしからぬセリフに

思わず笑ってしまう。

"運命"に夢を見過ぎだ。

そして、時代背景もキャラクターも滅茶苦茶だ。

シンデレラは、そもそも継母に働かされていた

可哀想な女の子じゃなかったか?

公爵令嬢の時点で、もはやシンデレラではない。


君の発想に笑ってしまう。


今のところ、この小説に

"わたくしから愛してしまうような殿方"

すなわち、運命の王子様はまだ出てきていない。


というか、君も自分で作ったはずの物語の設定や背景が、よく分からなくなっているのだろう。笑


もちろん、"あの子"とは違う君に

恋愛経験がないことも原因の一つだろう

けど——— 。

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