第138話

とにかく、その物語と逃げられない君の現状を

重ねていることはよく分かった。



「 僕がこの物語に入ることができるのなら

地位も身分も関係なく、いつだって君のことを

連れ出すのに。 」



嫌でも教えるのに。僕が運命の王子様だって。


なんて。

虚しくなって苦笑いする。


・・・


突っ込みどころ満載の設定はさて置き、

この物語は君の気持ちと重ねて書いてあることは

よく分かった。


昨日君に会って、君と"あの子"の違いを知ったことぐらいで落ち込んでいる場合ではない。

そんなことは、会う前から分かっていた。

君と"あの子"を重ねてしまうことなんて、

今はどうでもいい。

とにかく、最短で君を恋に落とすまでだ。


この物語を悲恋にするわけにはいかない。



「 運命がどういうものか、教えてあげるよ。 」



"運命とは、優しくて温かくて簡単で楽しいもの"

ではない。

そんなふうに愉快に表現できるものでもない。



「 傷付けて、忘れられなくて、苦しくて、

辛くて、いっそ消えたくて。 」



そして、極上に甘いものだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る