第135話

『 じゃあ、また明後日ね。

時間はいつも22時半ぐらいだと思うけど。

お酒とおつまみは各自調達です。 』



色々と話がまとまったところで君が切り上げる。


もう少し一緒にいたいんだけどな。

そんなこと、口が裂けても言えないけど。



「 了解。 」



『 じゃ、おやすみ。 』



待てよ。

いくら何でもあっさりしすぎだ。

もう少し"恋人の僕"に興味を持ってくれないか?


まったく、人の気も知らないで。


そんなことを思いながら、

今のこの状況が楽しくてついつい笑ってしまう。



「 ちょっと待って。 」



さっさと帰ろうとする君を引き止めて、

僕は君を抱きしめる。


はぁ。可愛い。たまらなく。


たまらなく、好きだ。



「 恋人たちの別れ際は、こうするの。

知らなかった? 」



驚いているのか、大人しくなった君。

強く抱きしめると壊れてしまいそうなか細い君が

あたたかくて安心する。



『 え、うん。知らない。 』



うん。そうだよな。

こんなこと、知らないよな?


もうずっと長い間、君に変な虫がついていなかったことを確信し、嬉しくなる。



「 おやすみ、ユウミ。気を付けて。 」



『 リョウジも。 』



少し照れた君の頭を撫でる。


可愛すぎだろ。

これ以上一緒にいると

本当に持って帰りたくなるんですけど。

なんて。


冗談の皮を被った本心に、また笑ってしまう。


幸せだな。

この感じ。

すごく懐かしい。


・・・


久しぶりの恋愛の高揚感と

君への安心感にどっぷりと浸りながら

僕は反対方向に足を進めた。

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