第130話

『 やっぱり、変かな? 』



君が不安そうな顔をする。


違う。そうじゃない。

君と"あの子"を錯覚して、驚いただけだ。


僕の気持ちを君に悟られないようにするため

平常心を必死に取り戻す。



「 そんなことないでしょ。

ただ、美人だから意外で。

気分悪くさせたなら、ごめん。 」



『 全然大丈夫。気にしないで。 』



君は少し悲しそうな顔をした。


・・・



『 それより、どうしてコインランドリー?

おうちに洗濯機がないとか?

使うにしてもここは狭くて古いのに

爽やかなリョウジの雰囲気に合ってない。 』



相変わらずだな。

君の真正面からの物言いに僕は笑ってしまう。


まったく、可愛いな。



「 すごいストレートに聞くね。

その通り。海外から帰ってきたばかりで

家に洗濯機がないの。

ここを選んだのは、外からユウミが見えて

晩酌いいなって思ったから。

ユウミこそ、ここの雰囲気に合ってないけど。

家に洗濯機ないの? 」



僕は笑いながら、全く同じ質問を返す。



『 壊れたの。

買っても良いんだけど事情があって

私にはタイムリミットが迫っていて、

買って無駄になると困るし。

それで、2日に一度はここに来るの。 』



「 タイムリミット?

何それ!本当におもしろいね。

小説家っぽい返し。 」



僕がそう言うと

君は顔を上げ、力なく笑った。

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