第68話

飲み物を先にオーダーして、

待っている間にメニューを開く。


素敵なフレンチのお店だけど、

わりとカジュアルなお店。

コース料理はメインディッシュだけ自分で選ぶ

スタイルだ。


確か、牛フィレ肉のポワレが美味しいって

言ってたっけ。


メニューの中から、私の大好物である

"オマール海老のヴァプール"を見つけた。



「 私、メインはオマール海老にする。 」



そう言った瞬間、リョウジは吹き出した。



『 僕、牛フィレ肉のポワレが美味しいって

言わなかったっけ?ホント素直。 』



ブレないな〜って言いながら、笑うリョウジ。


別にいいじゃん。

そう思いながら、少し不機嫌になる私。


・・・



「 ヒューガルデンとスパークリングウォーターをお持ちいたしました。 」



飲み物が置かれてから、リョウジがお料理を

頼んでくれる。



『 ユウミ。初デートだね。乾杯。 』



「 うん。乾杯。 」



ベルギーのホワイトビール。

柑橘系のほんのりとした香りが好きだ。


アミューズのオリーブの塩漬けが運ばれくる。



「 リョウジ。今日は聞きたいことがある。 」



私がそう言っても驚いた様子もなく

微笑むリョウジ。



『 いきなり?せっかくの初デートだから

もう少し純粋に楽しみたかったんだけど。

まぁ、いいよ。何が知りたいの? 』



全てを見透かしたような、リョウジ。

その目が、すごく温かくて切なくて。

そして、寂しい。

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