第66話

リョウジが車のエンジンをかける。

Claude Debussyの「月の光」が流れる。


まただ。

また私と好みが被った。

クラッシック、好きなの?


リョウジ。あなたは一体何者で

私に何をしようとしてるの?

どんな企みがあるの?


2人とも、しばらく無言だった。


・・・


車は山の中に進む。

暗いし人通りが少ないけれど、大丈夫かな?


リョウジには何か企みがある。

そう気付いた後だから、

この道は少し怖いと思ってしまう。


そう思っていた矢先、湖が見えてきた。



『 今日はここに来たかったんだ。

湖が見えるレストラン、le lac。

ここの牛フィレ肉のポワレが最高に美味しいの。』



そう言って、少年のような笑顔を見せるリョウジ。


何だ、、ただ普通にここに来たかったんだ。

ほっとする。



「 楽しみ。こんなところにレストランなんて

あったんだ。知らなかった。 」



私がそう言うと、リョウジは微笑んだ。



『 初デートだから、美味しいもの食べたくて

ここにした。 』



リョウジが優しい顔をする。

私はなぜかすごく切ない気持ちになった。

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