第54話

『 明日は来るよね?コインランドリー。 』



家を出てからの分かれ道。

リョウジが言う。



「 うん。行く。 」



『 じゃあお酒持っていくね。 』



「 私も買っていく。楽しみにしてる。 」



『 うん。仕事頑張って。 』



恋人たちの別れ際の儀式であるハグをする。

背の高いリョウジに包まれる。



「 キスはしないの? 」



抱きしめられたままリョウジに聞く、私。



『 さすがに他人の目が気になるでしょ。

それに、昨日たくさんしたからね。

今のところ、まだ満足感に浸れてるかな。 』



そう言って、リョウジが私の頬を触る。

大きな手。

不満足そうな私を見て、クスクス笑う。



『 あんまり可愛いのも、考えものだな。

煽るのやめてもらってもいい?

仕事に行きたくなくなるんだけど。 』



結局、キスをするリョウジ。



『 じゃあ、また明日ね。 』



頭を撫でて、リョウジは分かれ道の

私とは反対の方向に歩いて行った。



「 ずるい。 」



すごくずるい。

だけど安心する。


私はリョウジのことが好きなのだ。


改めて、そう自覚をした。

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