第53話

・・・


朝、目が覚める。

仕事に行かなければいけない時間。

となりが温かくて、起きるのが勿体ない。

そう思って、リョウジにもう一度抱きつく。


クスクス笑う彼。



『 ユウミ。可愛いからやめて。おはよ。

身体、しんどくない?痛いところない? 』



優しいリョウジ。

仕事に行きたくなくなる。

恋の威力ってすごいな。



「 大丈夫。どこも痛くないよ。

でも、もう起きなきゃいけない時間なの。

リョウジはフリーターだから時間決まってない?

ゆっくりしていっていいよ。 」



私がそう言うと、吹き出す彼。



『 ホント、言い方がストレートすぎ。

デリカシーのかけらもないね。

まぁ、そこがユウミの良いところだけど。

フリーターも一応バイトがあるから

ユウミと一緒に出ようかな。 』



え、ごめん。

素直にそう思った。


世間知らずってこういうところに出る。



「 朝ごはん、食べる? 」



『 お。食べたい。 』



「 そんな大したものはできないし。

簡単なものしかないけど、いい? 」



『 プチトマトが入った、

ハムチーズエッグが食べたい。 』



え?

それ。私の得意料理。

すごい。何で?


ここまで来ると、本当に"運命"だ。


それとも——— 。



「 リョウジ。もしかして。

私とどこかで会ったこと、ある?

そんなピンポイントで言うなんて。 」



『 え?何?ユウミも得意料理なの?

プチトマト入りのハムチーズエッグ?

僕が一番びっくりしてる。本当に? 』



気のせいか。

それなら、本当に運命なの?

そう思うと、嬉しくなった。


披露するほどでもない簡単なレシピを

2人して得意料理だと思っていることが面白くて

微笑み合う。



「 では、プチトマト入りのハムチーズエッグを

作りますので待ってて。 」



『 了解。ありがと。 』



幸せな、朝だ。

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