第40話

家の方向へ5分ほど必死に走って、

そのあとはさすがに疲れてトボトボ歩いた。

歩きながら、考える。


私、何てこと、、しちゃったんだろう。


自分の行動と相手の反応に、怖くなった。

急に虚しくなった。


"やっぱりリョウジじゃなきゃ駄目なんだ"


そうか。

初めて会ったあの日から、私は好きなんだ。

1000円札を貸した、あの瞬間から。

恋、してしまったんだ。


早いとか遅いとか、理屈ではない。


リョウジにとっては、無知な私が

好都合なだけなのかもしれないけれど。

私にとって、リョウジは"初恋"なんだ。


そんなことを、頭の中でグルグル考える。


いつの間にか、マンションの前に着いた。

鞄から鍵を出す。


・・・



『 ねぇ。何で逃げるの? 』



え。



『 ずっと好きだったのに、どうして?

やっと追いついた。僕のものにしていい?

おうちに、入れてよ。 』



塚本くん、さすがにホラーだ。

びっくりしすぎて声が出ない。


怖い。


いや、違う。

全部。全部、自分のせいだ。

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