第38話

『 恋人、いらっしゃらなかったんですね。 』



仕事終わりに来た、薬局から歩いて来れる

オシャレでカジュアルなブラッスリー。

カウンターの隣の席に座っている塚本くんが

そう言った。



「 うん。塚本くんもいるのかと思ってた。 」



『 僕は1年ぐらいいませんよ。

それに何だったら土屋さんのことを

良いなって思ってたし。 』



すごい。恋愛未経験者なのに。

こっちがその気になれば

スルスルと話が上手く進む。


それとも、ビギナーズラックだろうか。



「 良いなって思ってたんなら、告白してよ。

塚本くんに誘われるの、待ってたのに。 」



ハラリと出てくる美しい嘘。



『 人に興味がないのかと思ってました。 』



「 興味がないフリをしてたの。 」



彼に、瞳を合わせる。



『 僕のこと、好きなの? 』



「 どうかな? 」



そう言って、塚本くんが持っているグラスの手に

指先だけスルリと触れた。



『 今更やっぱりナシとか無理ですよ?

自分からそこまでしておいて。 』



オトコってすぐ糸切れるんで。

お酒が入った彼は、そう言った。

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