第17話

「 じゃあ、今日は何を渡せばよかったの? 」



まだ笑っているリョウジに聞く。



『 バレンタインって聞いたことない? 』



ねぇ、馬鹿にしてるの?

それぐらいありますけど。

世間知らずの私だって、父と兄にあげている。



『 今日はそのバレンタイン。

ユウミからチョコを貰えるかもしれないって

楽しみにしてたんだけどな。 』



あ、今日か。

そういえば、忘れていた。

というか、恋愛未経験者の私が

そんなところまで頭が回るわけがない。



「 ごめん。チョコ、ない。 」



でしょうね。

笑いながら、そう言ったリョウジ。



『 そう思って、僕が買ってきた。

海外では男性からもプレゼントするから。 』



コンビニで売っていそうなチョコレート。

男の人から初めて貰うプレゼント。

すごく嬉しい。



『 お嬢様はこんな安いチョコレート、

食べたことないかと思って。

コインランドリーにぴったりでしょ? 』



「 嬉しい。リョウジ、ありがとう。

食べてもいい? 」



そんな大したものではないけど、どうぞ。

そう言ってくれた。



「 リョウジも食べなよ。 」



私がそう言うと、



『 自分で買ったバレンタインのチョコを

食べるのって—— 。 』



リョウジはフッと笑いながら、間を置く。



『 —— 何か新鮮だな。 』



リョウジがそう言って、また微笑んだ。


この感情は、なんだろう。

彼の笑った顔を見てると、何だか落ち着く。

胸の奥が、きゅっとする感じ。


・・・


でも、どうして?

どうしてそんな悲しい顔で笑うの?

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