第9話

何だか、初めて本音で話せる友人ができた。

そんな感じ。

リョウジにだったら、何でも話せそうだ。


・・・


乾燥機が終了の音を鳴らした。

2人で畳む。



『 それで、タイムリミットって何?

なんか深刻なこと? 』



リョウジが聞いてくる。


一瞬考えた。

初めて会った人に言ってもいいことか?

どうせ、言ったところで信じてもらえない。

けれど、タイムリミットが迫っている。

ここで不甲斐ない現実を全て吐き出して

"自由の最後"の思い出にするのも悪くない。


家柄や仕事のステータスなど全く関係なく出来た

初めての友達だ。



「 家の事情でもうすぐ帰らなきゃならないの。

会ったこともない知らない人と結婚して、

一生、退屈でつまらない檻の中に入るの。 」



急にメルヘンチックになった私の話。

リョウジはきょとんとした顔をした。



『 何それ。それは想像の話?それとも実話?

あ!次の小説の企画とか? 』



そんなことを言うリョウジを見つめた。

真剣に。

私には、本当にタイムリミットがある。

そんな思いを瞳に詰め込んだ。


何かを感じとったのか、リョウジが言う。



『 結婚って、、親が決めた人と?

ユウミは恋愛もしたことないんだよね?

そんなんで良いの?

逃げ出したいとか思わないの? 』



「 今までの人生で、逃げ出せた試しがない。

それに、あと1ヶ月ちょっとしかないのに

恋人ができるわけでもないでしょ?

できたところで、すぐにサヨナラだし。

せめて、小説で大当たりしないかなって

僅かな希望を持って今も書いてるけれど、

見様見真似で書いている恋愛小説だから

リアルな恋にはやっぱり敵わなくて。

あの4コマ小説の読者は全然いないと思うよ。 」



沈黙になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る