第2話

私は、売れない小説家をしている。


別に小説家になりたかったわけではない。

これは、反動だ。


裕福な家庭環境で育った。

曽祖父の代から医者の家系だ。

小さい頃から蝶よ花よと育てられて

ずっと退屈だった。


唯一、好きだった勉強。

かなり優秀だったと思う。

しかし私を上回る頭脳の兄がいたため

私はお茶やらお花やらピアノやらに

力を入れさせられた。

親のエゴだ。

私自身は全く興味がなかった。


反論するのも面倒で

両親に言われた通り賢く育った。


唯一好きだった読書をして

本の世界を想像しながら

ただ静かに、時が経つのを待った。


大人になればきっと自由だ。


しかし、その夢は呆気なく散った。


遠くの街で一人暮らしがしたい。

静かに生きていきたい。

だったら、どこへ行っても使える資格を

取らなくては。

そう思って、私は薬科大学へ進学したのに。


就職活動は何もせずに終わった。

父の病院への就職が勝手に決まったからだ。


うんざりだ。


だけど、今逃げ出すべきではない。

そう思った。


アルバイトもしたことがない私。

貯金もなければ世間も知らない。

結局、親のお金に頼ることになる。

そんなの、絶対に嫌だ。


3年間頑張って働いて、お金を貯めよう。

そして、4年目に羽ばたくんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る