プロローグ

第1話

『 あの、すみません。

細かいお金、持ってません? 』



え?



『 あ、急にごめんなさい。

今、5000円札しか持ってなくて。

両替ができなくて、困っています。 』



なるほど。そういうことね。



「 ありますけど、1000円で大丈夫ですか? 」



『 すごく助かります。ありがとう。 』



急に声をかけてきた男性に

私は1000円札を貸した。


2日に一度来る、コインランドリー。

古くて狭いから、人気がなくて。

でも、私にとっては好都合で。

コンビニでビールとおつまみを買って

仕上がりを待ちながら一人で晩酌をするのだ。


だから、今日は人がやって来て驚いた。

ここに似合わない、爽やかな男性。

同い年ぐらいだろうか。


広げたおつまみのことなんて忘れて

珍しいな、なんて呑気に思っていたら

"お金持ってませんか?"って。

普通なら貸さないと思うけれど

お酒が入っているのもあいまって、

気分が大きくなって貸してしまった。



『 晩酌、いいですね。僕も飲もうかな。

5000円をコンビニで両替してくるので、

ついでに僕もビールを買ってきます。

良かったら、一緒に飲みません? 』



「 え?あ、はい。 」



爽やかすぎる笑顔に動揺して、

思わずそう返事をしてしまった。

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