第71話

無理だよ。こんな尻を横目に見ながら用なんて足せない。尿意執行妨害だよ。



 そういえば蓮見先輩、さっきトイレに行ってたよな。その時、「ママー!!めっちゃ出たー!!」って言ってたけど、一体何が出たんだろう。



 それと凄く言いたくない事実なんだけど、見てしまったから言わざるをえない。



 その飛び出ている尻に、ちょっと無理にこじ開けられたような穴、つまり直径15㎝ぐらいのブラックホールができている。···蓮見先輩の巨チンの事実が実証されてしまった。



 最悪だ。私は顔面神経麻痺を起こしたかと思うほど無表情になった。




 今にも飛び出そうな魂をぐっと飲み込みトイレから出ると、蓮見先輩が真っ青な顔でトイレの前で体操座りをしていた。



「み、···見たのか、ああ朱南·····」



 かなり動揺しているようで、蓮見先輩の手持ちぶさたの手は、何故か私を拝むような形になっている。口調もいつもの先輩に戻っていた。



「···いや、見ますよね。あんなの真横にいたら、見ないわけにいかないというか···


というか帰ります。」



 私は死んだ表情のまま先輩を一瞥し、玄関にある靴を履いた。


 真っ青になりたいのはこっちだ。



「あ、あああ朱南!!ま、待て···!」


「······」


「ちち違うんだっ、あああれは、ただの観賞用であってッ!」



 立派なブラックホールができてただろ。


 観賞用にしたってあんなもん鬼だ。観葉植物の感覚で尻ホールを作られるなんてたまったもんじゃない。



 でもリフォームしてまでわざわざあれを取り付けるって、相当な根性だと思う。キモいとか生理的に無理とかよりも、むしろ感心のがまさる。



 いや、もう私の顔がプリントされてるとか裸って事実は、100歩譲って理解するとしよう。



 私が理解できないのは、何で"尻"なのかってこと─────

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