4.大臀筋に感じるバブ美

第60話

寝て起きたら全部夢だったってオチがいいのに。



 むしろ前世の30代に戻りたい気分だ。あの頃はただBLを傍観しているだけで良かった。


 漫画の中の世界は漫画だから楽しい。


 前世で漫画のような修羅場を体験したことは何度かあった。



 知らない女に「この泥棒猫!!」と罵声を浴びせられたことや、80代のお爺さんが経営するカフェで、彼氏とその浮気してる女に挟まれ、地獄のトライアングルを完成させたこともあった。(その2人は実は夫婦だった)



 その度に、この現実が漫画だったらいいのにとよく思ったものだ。



 でも漫画の世界でも、これが漫画だったらいいのにって思うこともあるんだな。



 頭痛がする。あの半分は優しさでできた薬を飲んだら、その優しさが身に染みた。


 やっぱり昨日無駄な性告白を2度も受けたことが原因なのだろう。そのお陰で2人からプロポーズされた記憶は薄れていた。



·····それなのに。



 ブーとバイブ音を鞄の中で響かせるスマホを取り出してみれば、そこには琉生から、


『結婚したら俺のことお兄ちゃんて呼んでいいからな♡』


と電波の無駄使いメッセージが入っていて、ライン画面を見てみれば秋人から、


『神影朱南神影朱南神影朱南、手枷足枷猿轡鼻フック神影朱南····』


と呪詛のように羅列されたメッセージが入っている。


 何にせよ鼻フックは嫌だ。



「よっ一門!昨日の"彼シャツ"みたいな格好はもうしないのか?!」

「おい朱良ちゃ~ん、昨日の合コンはどうだったの~?お持ち帰りしちゃったー?」



 朝から知り合いに、昨日のジェンダーレスの格好をからかわれるも、機嫌の悪かった私は「あ"?」とガン飛ばして返してしまった。

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