第54話

「確かに俺は素行悪いし、秋人みたいに眼鏡も似合わないし···きっと朱南は俺みたいな駄目人間よりも秋人みたいなのがいんだろうなー···」


「いや目くそ鼻くその域だよ。」


「ああ···俺なんかどーせ生きてても意味ないんだよな~、はあーきっと地獄に落ちても1人寂しく釜で茹でられて骨になってくんだろうな~···」



 そんなことを呟きながらも琉生が「ハッ」と何かに気付いたように立ち上がり、おもむろにクローゼットを開けだした。



 クローゼットの中は服やら漫画やらゲームやらが詰まっており、軽く雪崩が起きていた。



「と、突然どうしたの琉生?」


「早く、早く死なないとー···、ロープロープ···」


「ああ、首つるためのロープ探してるの??」



 私も一緒にロープを探した。でもロープなんてものは見当たらなく、ぬいぐるみやくだらないおもちゃを掻き分け出てきたのは、ビニール製の青い縄跳び。



 そういえば高校時代、琉生はよく縄跳びでランニングをしていた。不良止めてからはしばらく筋トレや体力作りに励んでたよね。



 私は仕方なくその縄跳びを琉生に手渡した。



「縄跳びでもいけるんじゃない?」


「あ、ありがとう、そしてさよなら朱南···!!引き止めてもムダだからな!」



 私から縄跳びを取り上げた琉生が勢いよく部屋を飛び出していった。


 私は座布団の上に座ると、大きく溜め息をつき机に突っ伏した。



 はあ、疲れた。ちょっと休憩。ようやく琉生から離れられた。なんかすでに一週間分くらいの体力を使った気がする。



 クローゼットからの漫画や雑誌の雪崩が、私が座る場所まで落ちてきていて、もしかしてエロ本でも隠してんじゃない?と疑いの目を向ける私。

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