第51話

琉生がこんなウザくなってしまったのはいつからだろう···高校時代はこんな悲観的じゃなかったのに。




『私と仕事、どっちが大事なの?!』



 悪いけど私も実はこのセリフを、前世の男に言ったことがある。



 会えるのは1ヶ月に1度、決まって2週目の土曜日。それなのに2ヶ月に1度になる時もあれば、クリスマスやバレンタインは"仕事"を理由に会ってもらえず。


 私が結婚を匂わせる発言をすれば、今は"仕事"が大事だからと。


 それでも大手メインバンクに勤めるエリートの彼だから仕方ないと自分に言い聞かせ、都合のいい女になり下がる私。



 私の誕生日、会うと約束してくれていたのに、いくら待っても待ち合わせ場所には来ず、2時間経って、私は繁華街をブラつくことにした。


 ショーウィンドウには今にも涙を流しそうな自分がいて、それでも泣くもんかと決めた瞬間だった。



『そこのお姉さん!寂しそうにしてどうしたの?ちょっとうちの店で遊んでかない?いい夢見せてあげるよ~。』



 完全なキャッチだ。


 勧誘の軽々しい言葉にムカついて、ハッキリ断ろうと顔を上げた時だった。



『き、清?!!』

『げッ··』



 なんとそいつは私がずっと待っていた彼氏だったのだ。


 いつもの固めたヘアスタイルにかっちりしたスーツ姿じゃない···。それは、髪を立たせ、パープルのシャツに赤いネクタイをつけたホストだった。



 彼がメインバンクに勤めていたというのは真っ赤な嘘で、実はホストクラブで働いているとのことだった。



『何で?!?今日、私の誕生日なのに、なんでそんなことしてんのよ?!!』


『チッ、パイセンがインフルになって急遽代わりが必要になったんだよ!』


『嘘つかれてただけでもムカつくのに何で私の誕生日すっぽかすのよ!!私と仕事、どっちが大事なの?!』


『仕事。』



 秒で返答され、「大人しいから好きだったのに、そんなウザい女だと思わんかったわ」と捨てゼリフを吐かれ、誕生日に捨てられたのを思い出す。



 

 琉生は確かにウザい。


 ウザいけど、前世で自分が捨てられ辛い想いをした手前、琉生の気持ちを無視することも出来ず···。


 私は仕方なく琉生の部屋に招かれてやることにした。ああ、やっぱり私って都合のいい女かもしれない。。

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