第43話

逃げないはずのラブドールに首輪、食べないはずのラブドールの前には銀の皿、そしてその皿にはきのこの山の山···


 今この瞬間、秋人はきのこ党なのだということが判明した。私はたけのこ党なんだけど。



 さて、これを見てしまった私はどうしたらいいのだろう。いや、それよりも、もし万が一私が秋人と付き合っていたら、私はこのラブドールのような扱いを受けていたということなのだろうか。



 寒気がして身体を強張らせると、とにかく一刻も早く高梨先生に報告せねばと私は部屋から出ようとした。


 でも私がドアノブを回す手前で、ドアノブがゆっくりと回ったのだ。



「ッッ!」



 あまりにもビックリして、というかどうすることも出来ず、私は固まったままその場に震える足で立ちつくした。



「···朱南···」



 ゾクリとするような甘苦しい声。···頭の中にサイレンが鳴り響き、一歩一歩後退りをする私。



「···朱南、···見たんですか。」


「しゅ、秋人っ···ご、ごめんねっ?!勝手に入っちゃって!」



 ごまかす手立てが何一つ思いつかず、とにかくベッドの横に座り込むラブドール朱南の方へと、かかとを動かした。



「···あ、朱南···俺は、···か、彼女のことを愛しています···。」


「え?う、うん?!そのようだね、み、見るからにそそそんな感じだよね···はは!良かったね!!」



 あ、そうなの?それならいいんじゃない?!彼女と幸せにやってるならいいよいいよ!うん、ドールと両思いなんてとっても素敵なことだよね!!



 ···昔よくやったよね!シル○ニアファミリー!でもあいつら種族ごとで一族引き連れてるもんだから、大人になるにつれてちょっとイラっとしてくるんだよね。大きな家でアンティークな家具に囲まれてさ、幸せそうに家族ではびこる姿見せつけてくるもんだから、おもちゃ売場通りがかる度に舌打ちしちゃうんだよね。

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