第44話

でも聞いてよ秋人!今の私には、そんなウサギやクマにしたような嫉妬は全くないよ?!むしろちょっと安心してるくらいだよ。


 そのドールの顔面さえ私じゃなければ、心の底から安心できたはずなのに···。



「でもね朱南···、本当はあなたに触れたいし、あなたに触れられたいし、」


「···いやいやいや、わ、私が触れようとしたら秋人、気絶したし。」


「あなたに触れたり、触れられることを考えるだけで俺はもう、我慢が効かなくなるんです···。」


「っ···」



 が、我慢て····何の我慢···?



「もっとあなたの肌のきめ細かさを堪能したい···毛穴の隅々まで舐め回したい···!」



 ああ、秋人が"毛穴すっきりパック"なら良かったのに····いつでも毛穴の黒ずみがすっきり取れるだろうに····。


 違う!今はそんな悠長なことを言ってる場合ではない!!それは死ぬ気で我慢すべきだよ秋人!!



「わ、私なんてこちらにお住まいのドール様の足元にも及ばないよ!」


「あなたに触れられそうになる度に、あなたを俺の雌犬にすることばかりが頭を過るんです!」


「グフッッ!!ヒューヒュー····

"雌犬"のワード、凄い過呼吸になるんだけど!!」



 私は自分の胸を掴み、必死に空気を吸い込んで呼吸を繰り返した。でもなぜか私よりも呼吸困難に陥っているのは秋人の方だった。



「朱南···どうか朱南っ、あなたを雌犬にすることばかりを考えている俺を嫌いにならないで下さいっ!!」


「いやなるよ?!!馬鹿じゃん!!」



 嫌いにはなるし、憐れな目で見るし、蔑むし···。私、そんな秋人に雌犬として蔑まれてるかと思うと虫酸が走るよ?



「馬鹿でも何でもいいです!俺はあなたを無理に雌犬にしようとは決して思いません!!ただ朱南ドールを雌犬にして楽しむことはどうか許していただきたいっ!!」


「何開き直ってんの?!!!御曹司が何言っても許されると思ったら大間違いだからね?!!」

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