第39話

いつもは私の後ろをついてくる秋人が、今日は私が秋人の後ろをついていってる。


 足が早いせいか、ずんずん進んでいく秋人。


 慌ててついていくと、私は高梨先生のいう、"引いてダメなら押してみろ"作戦を実行することにした。



「····ま、待って秋人!」



 秋人のシャツの裾をキュッと掴む。


 秋人が止まった勢いで、背中に軽くタックルしてしまい、自分の身体がぶつかってしまった。


 すると秋人が、また驚いたように私を見て顔を真っ赤に染めて、拳をギュッと握り締める。


 でもまたすぐにスタスタと歩いて行ってしまった。


 ···え?これってもしかして、作戦効いてるんじゃない??



 私はそのまま秋人の後ろをついて行き、教室に着くと、自分の心に「押せ押せ」と言い聞かせ、秋人の隣に座った。



「ねえ秋人、ちょっとあの先生の文字、宇宙語じゃない?何て書いてあるか分かんないんだけど、秋人分かる?」


「あ、は、はい···なんとか。よ、良かったら、ノート写します?」


「ありがとう秋人!」



 秋人に笑顔を見せ、ずいっと秋人の肩に触れるくらい近付いてみる。


 すると秋人は深く深呼吸を繰り返し、授業が進むにつれ、動悸、息切れ、めまいを起こし始めた。



「だ、大丈夫??秋人···」



 私がそっと秋人の額に手を当て、手を離した瞬間、秋人は気絶した。



え----?!!?

私ってシシ神様かなんかなの?!?命を与え命を吸い取る尊い存在だったの?!



 とりあえず、周りにいる生徒に手伝って貰い、秋人を保健室に運んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る