第38話

高梨先生に言われた通り、私は無謀にも実行してみることにした。


 誰もいないところで実行する勇気はないから、出来るだけ人数の多い授業を狙って。


 私は朝から気合いをいれた。


 いつもは襟のついたシャツに、大きめのベストやカーディガンを羽織って、下は脚の形が分からないようなカーゴ系パンツを履いていた。


 でも今日は大きめのトレーナーに、スキニーパンツを履いて大学に行くことにした。


 お尻から太ももにかけては、トレーナーが隠してくれているから大丈夫なはず。


 ジェンダーレスという格好だ。


 髪は相変わらず短いが、前髪を横に流し、いつもは真ん中の分け目を今日は右寄りにして。


 パチンッと両手で頬を叩いたところで、私は部屋を出た。



「え?あれ?...い、一門??」

「え?!なんかいつもと雰囲気違くない??」


「おはよー!」



 何人かの生徒に声を掛けられた。



「おいっ、一門、今日もしかして合コンなの??」


「え?!ち、違うよ、たまには気分変えてみようかなって...」



 なんか前世の20代後半を思い出す。合コンのある日は、あまり気合い入れて朝からオシャレしていくと会社で皆にからかわれるから、毛先だけ巻いたりしてたよな。でも結局、それだけで「今日の夜なんかあるの?」って聞かれるんだよな。



 案の定、寮の入り口には秋人が待っていて、私の姿を見て目を丸くする。



「お、おはよー、秋人。」


「あ、ああ...。」



 それだけ言うと秋人はすぐに外に出て行き、足早に学校へと向かい始めた。

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