第32話

でも心陽君は手を伸ばしてくれて、



「先輩.....、可愛い。」


「.....え?」


「風邪ひくから、早くこっち戻って下さい。」


「.......」



 手をひかれてまた倉庫に入ると、心陽君が私にウィンドブレーカーを掛けてくれた。




 それから心陽君は、違う意味でウザい存在になった─────。




「朱南先輩ってB寄りのCなんですか?C寄りのBなんですか??」


「.....唐突に何の話。」


「朱南先輩の胸のサイズに決まってるじゃないですか!!分からないから質問してるんですよ。」



 何だこの無駄な時間。


 因みに私はBとCの間だと言ったが、彼ら4人につきまとわれるようになった心労でちょっと痩せてしまい、B寄りのBになってしまったのだ。



「ねー先輩~、ぶっちゃけ僕ら4人の中で誰が一番好きなんですか~?僕年下だから、これでもいつ先輩を奪われるんだろうってハラハラしてんですよ??」


「とてもそうは見えないけどね?...心陽君てさ、ぶっちゃけ男にモテそうなんだから男と付き合ってみなよ。何事も経験だよ?」


「その脈絡のないアドバイスは何なんですか。てか朱南先輩こそ、今まで何人かに告られそうになったの知ってます?」


「........」


「僕らの誰かと付き合っちゃえば、もう狙われることはなくなるんですよ?早く誰か一人に絞って下さい!」



 私、4人の中の誰かと付き合うなんて一言も言ってないんだけど。



「朱南先輩が絞らないつもりなら、こっちもどんどんルールを緩くしていきますから!」


「は?」


「今まで先輩の肌には触れるなだの何だの、ガラスのように扱ってきましたが、大学に行ったら手マンまでアリってことにしますから!」


「いきなりルール突き破りすぎじゃない??!馬鹿なの??!!」


「どっちが馬鹿か試してみます?いっとくけど僕、朱南先輩が泣こうが喚こうが、笑顔で襲える自信ありますよ?」



 心陽君が机に手をつき、いきなり顔を至近距離まで近づけてきて、私は思わず息が詰まってしまった。

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