第21話

本来漫画では、この委員会で心陽と蓮見先輩が運命の出会いを果たす。



 心陽はこのセレブ校では珍しい、庶民の家の生徒だから、蓮見先輩が特待生で入ってきた心陽を気遣い、優しく話し掛けるのだ。いじめられたり困ったことがあれば自分を頼ってほしいと。


 それが、委員会には出席していたはずの心陽君があっという間に消えてしまったのだ。絶対におかしい。


 私がどこかの展開を一つ変えてしまったことで、全部のシナリオが変わり始めているのかもしれない。



「一門、何か困ったことがあれば俺を頼れ。」


「は、はい.....あ、ありがとう、ございます....。」



 お礼を言う私の声が小さくなったのは当たり前のこと。


 秋人や琉生が守ってくれていたとはいえ、私はどうしても蓮見先輩の、ある部分・・・・に苦手意識を持っていた。



 メインキャラの中では、登場から心陽にずっと優しく接している蓮見先輩だが、実は彼は近年稀にみる巨チンだ。


 漫画の中では、欲情した蓮見先輩が心陽を生徒会室で犯そうとする。


 その巨チンを見た心陽があまりのでかさに泣き出すが、泣き顔に煽られた蓮見先輩が心陽に改心の一撃を決めるのだ。



 進撃の巨チンだ。



 あんなに爽やかな、優しそうな笑顔を向けておきながら中身はとんでもない巨チン。なにかスイッチが入ってしまうと彼は自分を抑えられなくなってしまうのだ。


 それに巨チンは女にとって嫌がられる要素の一つ。しかも今、この漫画において私は処女だから、どんなに優しい言葉をかけられても蓮見先輩が魔王にみえてしょうがない。



 その日、寮までの帰り道、私は秋人の腕をしっかりと掴みながら帰ってしまった。


 秋人は何度も眼鏡をかけ直し、私は足が震えっぱなし。始終顔を赤くした秋人と青ざめた顔をした私を見て、琉生が秋人に殴りかかりそうになったのは言うまでもない。

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