第19話

「あ、そろそろ夕飯の時間だね。」


「焼きそばパン、食う?」


「食う食う!」



 殴り合ったお陰で、4人の中では一番気兼ねなく接することができる相手だと思う。



 ただ、ただね、琉生はいつも私のどこを見ているか分からない。


 目を合わせて喋るのが苦手なのは分かる。それなら首元とか、肩とか、顔から少し外れた箇所に目線を置くはず。


 でも琉生は、いつも私の頭だったり、身体だったり、足元だったり.....その時によって目線が変わるのだ。


 かといって気持ち悪い感じもしないから、気にするほどのもんじゃないんだろうけど。



 20時になり、「おやすみ」と言った別れ際も、妙に腰のあたりに視線を感じた。




 次の日、授業が終わり、昨日の約束通り蓮見先輩にテラスで生徒会の試算表についての相談を受けていた。


 施設費が足りない....のではなくて、逆に余りまくってるからなんとかして使い切りたいとのことだった。使い切ってしまった方が来年度も同額の施設費が申請出来る。.....なんて贅沢な悩み。



「余った施設費で更衣室や自習室の拡大とか修繕をすればいいのでは?ああ、あとはシャワー室増やすとか??これ以上消耗品買っても置き場所に困りそうですし。」


「そうだな、シャワー室はもう少しあってもいいかもしれんな。」


「....本音を言うと女子専用のシャワー室がほしいとこですけど...。」


「そうだよな。朱南だけ寮の自室でしかシャワーが浴びれないんだもんな。当然寮の大浴場も行けないし、俺としては朱南専用をつけてやりたいとこなんだが。」


「あはは、冗談ですよ先輩!本気でとらないで下さいよ~。」



 蓮見先輩はいつも真面目で、ちゃんと生徒の意見を聞いたり取り入れたりと、生徒会長にふさわしい人材、だと思う。

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