第7話

私は悩んだ末、保健医の高梨稔たかなしみのりに全てを打ち明けた。


 彼はサブキャラで、この漫画でいかがわしいことをしているシーンはなかったから安全だと判断したのだ。



 私の言うことを本気に取ってくれたかどうかは分からないが、高梨先生は私にこう言った。



「はあ。。てかそれ朱南ちゃんが悩む必要ある??だって男共はその斎藤心陽君にしか興味ないんやろ?だったら朱南ちゃんは無害やん。」



.....確かに。。



「自意識過剰になりすぎやでほんま!」



 一言多いのはスルーし、私はもう一度自分のポジションを思い出した。



 そうだ、私はモブだ。


 1巻に5コマ程度しか出演しないキャラ、風紀委員長の一門朱良だ。いかがわしいシーンどころか吹き出しすらほぼない。


 それにこの漫画の最終回は主人公と不良キャラが色々な障害を乗り越えて結ばれるという、とどのつまりドロドロの恋愛性交ドラマだ。


 でも私には将来従事する企業を見据えるという極めて現実的な使命がある。


 さらに言えば私には掘り下げるような重っ苦しい過去もない。



 私は念のため護身術を身に付けようと高梨先生が得意とするムエタイを彼から教わり、立派な研究者になるため学業に励んだ。


 結果、2年生になる頃には試験で学年トップになり、2学期にはムエタイで治安を守っていたせいか風紀委員長というポジションについた。


 これは漫画の一門朱良、そのものの設定だ。


 ああ、モブで良かった。


 ですから皆さんお好きなように主人公襲ってヨロシクやって下さい。私はよだれと鼻水垂らしながら鑑賞してますので。

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