第6話

ちなみに私の本名は一色朱南いっしきあきな一門朱良いちかどあきらは女を隠すための偽名だ。



 この世界が『狼さんに食べられちゃう♡』だと気付いたその日、私は保健室で寝込んだ。


 こんなにも都合のいい設定を受け入れられるのは漫画や小説やゲームの中だけだと頭を抱えた。


 でも保健室から寮に帰ると、また私は自室のベッドに潜り込みさらに3日寝込んだ。


 この世界が淡い腐女子たちが溜め息をつき、「いいわあ」と感嘆するようなピュアな世界ではないことを思い出したから。



 "狼"というワードがつくタイトル通り、これはR18指定がつくBL漫画なのだ!淡さの欠片もない目が血走った腐女子たちが読む漫画。


 嘆かわしい。


 前世では本屋でドキドキしながら買ったはずなのに。興奮のあまり漫画によだれと鼻水が垂れてしまったこともあった。


 なんで私は今までそれに全く気付かず過ごしてきたのか。


 それはこの学園の皆が真面目だから。


 これまで厳しい家のルールに従い学業ばかりに専念してきた堅物男子たちがつどっているのだ。


 男同士でイチャイチャしている姿なんて見たことがなかった。


 ただそれは漫画の主人公である斎藤心陽こはるが入学して来るまでの話。


 つまり可愛いく(あざとい)純粋な(腹黒な)心陽という主人公が次第に周りの真面目腐ったタガを外していくのだ。



 これは男子校に現れた心陽という天使(♂)に心奪われた男子たちが周りに嫉妬し、それが醜く歪な形となって心陽の身体をピーやピーを駆使してぐちゃぐちゃに犯しまくるという腐女子の夢が詰まったR18BL漫画なのだ。


 もう嫌だおうち帰りたい。


 もし女の私に欲情なんてされたら......どうしよう。とりあえず窓からノーバンジーでダイブするしかない。

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