第5話

しかしうちのパパとママは普通じゃない。研究者故なのか、世間一般常識からかけ離れているのだ。



「同じ研究者よりも将来あるじとなる人間を見てみたいとは思わないか?朱南あきな。」



 父が「狼贅ろうぜい学園」のパンフレットを私に差し出すと、その一言が母の背中を押した。



「確かに、将来研究者として従事する企業のご子息を見て勉強するのが高校生活のいい活用方かもしれないわね!さすがパパ!朱南ちゃんのお婿さんを探すいい機会かもしれないし~!」


「ちょうどいとこのみのりが狼贅学園で保険医をやっていることだし、学園にも稔にもお前が女だということは説明しておくから。朱南、男装して入学しなさい。」



 あほか。



 うちは代々研究者としての血が流れているせいか研究職に携わってきた。


 しかし研究だけでは当然家業は成り立たず、企業に従事し託された研究を請け負い生活してきた。


 パパとママはどっちも研究者だが、パパもママもあわよくば私が大企業の御曹司と結婚出来ればと考えている。


 しかも"狼贅学園"は名前は馬鹿そうだがこの世界では一番ブルジョワでレベルの高い全寮制の名門校だ。


 中学校、高校、大学まであり生徒のほとんどが中学校から通っている。


 だからいきなり高校から入学なんてのは相当な難関だ。それなのに私は見事合格した。



 たまたま私の髪はグレーの男っぽい色で、丸みのあるショートボブに背も女にしては168cmと高めだった。


 色々無理矢理感が否めないし、そんな運良く保健医のいとこが学園に勤めているだなんて話もあり得ない。まだ教師の友達がいる方が現実味がある。


 つまり漫画の世界だから現実味がなさすぎるのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る